この記事は、2022年4月22日に「ボカコレ2022春」に投稿したオリジナル楽曲「始まりのウィンターランナー / 初音ミク」のプロダクションノート(いわゆる制作の裏話)です。
始まりのウィンターランナー こんな曲です
動画ページ概要欄より抜粋
だから 私は今 ここにいる 今は その先があると知ったから
はじめまして、Entac(えんたく)と申します。
ボカコレ2022春の参加作品で、オリジナル曲6作目です。2022.1の着手から完成まで、中断も含めて3ヶ月かかってしまいましたが、なんとか自身の満足できる内容に出来たと思います。今冬の自身の出来事をなかったことにしないための、そして新しいことを始めようとしている人の力になるための曲・映像を目指しました。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm40347194
2022年9月、やっと書き終えたあああ!
というわけで、リスナーのみなさま、大変長らくお待たせいたしました。
2022年9月になって、ようやく死ぬほど重い腰を上げて、本作のプロダクションノートを書き始め、ようやく、本当にようやく、簡単ながらまとめることができました。
2022年4月のボカコレ春で本作を聴いていただけた方も、そうでない方も、「1つの曲が完成するまでに何があったのか」の読み物として接していただければ、幸いです。
制作のキッカケ
2021年11月中旬からランニングを始めた
そもそものきっかけは、2021年11月中旬くらいから、早朝にランニングを始めたことでした。
特に「自分を変えよう」という大袈裟な感じでもなく・・・
- 寒くなってきた。けど暖房費は節約したい
- 部屋の中に篭っていると絶対太る。それは避けたい
- 自転車という選択肢もあるけど、眠い中で自転車走らせたら、事故るリスクある
- 室内のトレーニングも可能だが、そのうち牢屋の気分になる
というロジックで、たまたま「そうだ、じゃランニングしてみるか」となったのでした。あとは、やったことのないことをやってみたかったというもの少しあったかも・・・?
「スタバなう」の次の曲をどうしようかを考えていた
ちょうどこの頃、2021年11月27日の「ネタ曲投稿祭」に投稿予定の楽曲「スタバなう」の仕上げ作業の真っ最中だったのですが、同時に、漠然と「次の曲、何にしようかなー。作りかけの曲は季節の旬を過ぎてしまったし」なんて考えていました。
先述の「作りかけの曲」は、かなり「秋」の季節ソングの性質があり、12月になった頃には「これは今回はお蔵入りかなあ」となっていたところでした。
(2021年12月に何も発表がなかったのは、年末で忙しかったのもありますが、制作中の曲が旬を過ぎてしまいボツにしたのが理由でした)
2022年1月3日のひらめき「これはテーマになるかも」
そんな中でも、1ヶ月以上ランニングは続いていたのですが・・・。
年が明けた2022年の1月3日。ふと閃いたのが始まりでした。
「あ、これ楽曲のテーマになるんじゃね?ウィンターランナー的なタイトルで」と。
曲作り、何から始めた?
自分はアイデアを閃くための手段として、よくサイクリングに行きます。1月3日の午後、夕方が近くなってきた頃にも、アイデア出しのため、サイクリングに出ていました。
その帰り道にたまたま思いついたのが、
- のちにBメロで使うことになるメロディ
- サビの歌詞に「ウィンターランナー」と入れるとしたら?
の2つでした。
ここから発展的に色々考えつつ、曲を組み立てていった、という感じです。
楽曲のポイント
ここでは、楽曲の中のポイント(聴きどころ)について、いくつか書いてみます。
テンポは、実際に走っている時のリズムがヒント
この楽曲を考えるにあたって、最初に思いついたのが、コレでした。
自分の場合、自然に走っている時のリズムを確認したところ、おおよそBPM=175。「あ、これそのまま楽曲のBPMとして使えそうだな」となり、曲のテンポは結構最初に決まりました。
冒頭とエンディングで、ミクさんの「息づかい」を入れようとしたのも、初期に「これは入れたい!」と考えたアイデアです。
冬らしい透明感のあるコードをギターで鳴らしたい
冬の澄み切った、そしてヒンヤリとした空気。これをイメージするようなギターのクリーンサウンドを録音すること。
これは、当時(2月上旬頃)の自分なりに、かなり頑張ったのを覚えています。
倍音をしっかり出し、なおかつアタック感を際立たせるため、コード部分はほとんどピックではなく「爪」か「指」ではじくように弾きました。
動きまくるベースライン
この楽曲を作るにあたって、1つインスピレーションとなった楽曲があります。
カナダの伝説的ロックバンド「RUSH」が1985年に発表したアルバム「Power Windows」の中に、そのものズバリな「MARATHON(マラソン)」という曲があるのですが、この曲の動きまくるベースラインが好きで、取り入れてみようと、1月はGarageBandでの打ち込みに試行錯誤していました。
そんなわけで、ベースラインに耳を傾けながら聴いてみるのも面白いかもしれません。「これ実際に弾いたら楽しいだろうなぁ」を意識して作りました。
歌詞について
自身の冬の体験がベース
楽曲をご覧になった方はお気づきになられたと思いますが、この曲の歌詞は、ほぼ100%、自身の冬の体験がベースになっています。いつ何があったか?についても、具体的な日にちが個人的な日記に記載があったため、歌にはせずとも、動画の中に盛り込みました。
ちょっと変わっている(?)アプローチ
そして、動画の中の間奏部分にもあるように、歌詞を書くときのアプローチは、ちょっと変わっているかもしれません。具体的には、以下のようなプロセスを踏んでいました。
- 走りに行く時、スマホも持っていく
- 走っている最中に、空気や景色などから何かを感じたら、その瞬間にスマホを取り出して、浮かんだ言葉をダイレクトにメモする(僕は、これを「歌詞の原石」と呼んでいます)
- 「原石」は、日に日にどんどん蓄積されていく
- ある程度「原石」が溜まったら、これまでアウトプットしてきた言葉を、内容ごとにグルーピングする
- グルーピングした結果、この曲の歌詞の構成が見えてくるので、歌詞のフォーマットに落とし込んでいく
他のクリエイターの方がどのように作詞に対してアプローチしているのかは存じませんが、我ながらかなりめんどくさい且つ工数がかかる方法で作詞しているなあ、とは感じます。
ただ、同時に、純粋な気持ちから生まれた言葉が歌詞のベースになっているため、言い回しはともかく「言いたいこと」はブレないというメリットはあるかなと。
歌詞の編集
参考までに、歌詞の編集の初期段階、いわゆるグルーピングの作業は、以下のスクショのような感じで、Notionというアプリの上で、PCを使って行っていました。
2回の大きな中断期間
実はこの楽曲、2022年1月3日から制作を始め、結果的に完成までに3ヶ月かかってしまいました。具体的には、2回の中断期間があり、その期間中はまったくと言っていいほど、本作に関する作業はしていませんでした。
1回目の中断期間は、1/15〜2/5の間の資格試験の勉強。
そして2回目の中断期間は、2/13〜3/15の「足の故障」でした。具体的には、過剰な距離のランニングによる、足の裏へのダメージでした。
足の故障
「故障したくらいでwwww」と思われるかもしれませんが、2月中旬に医者に診てもらい、走るのを中断した時に感じたのが
「体験を伝えるにあたって、このままの曲でいいのか?それは嘘になるのではないか?」
ただ、どうすれば良いのかのアイデアはそう簡単には出て来なかったこと。そして、走れなくなったことからモチベーションも急激になくなり、結果として楽曲の制作を中断することとなってしまいました。
気分転換に、ほかの活動
その間、2月中旬〜下旬に気分転換で「れんこんダイバーシティ」を作ったり、3月上旬に宮崎に旅行に行ったりしていました。
アナザーパート(仮)
そんな中で2月下旬辺りから、歌詞の「続き」が降りてきました。自分はこれを「アナザーパート」と呼んでいました。これは、楽曲の終盤近い箇所の変拍子パートになります。
そう、このパートは、3月以降にあとから付け足したものなのでした。
3月下旬。思考ストップにぶつかりながらの作業再開
何から再開すればいいのか分からない
2月下旬に「アナザーパート」のことを閃き、構成や歌詞についてアレコレ考え始めはしていたのですが、、、3月上旬、まだ着手は出来ないでいました。
しばらくプロジェクトファイルを開いていないので、何から再開すればいいのか分からない、という気持ちがあったからだと思います。
作業再開は3月19日から
ようやく腹を決めて作業を再開したのは、3月19日のこと。
しかし最初は案の定、まさしく「何から・・・何から始めればいいんだ?」といった精神状態。思考が頻繁にストップする中での少しずつの作業でした。
それでも、なんとか忍耐強くプロジェクトファイルに向き合い、3月26日に曲が完成。「これをボカコレで発表しよう」と決めたのも、この日でした。
(動画の中の最後のパートを「3月26日」としてあるのは、春というのもそうですが、楽曲が完成した日、という意味合いも込めました)
4月は「動画を頑張る」とテーマを決定
というわけで、4月。
投稿日である22日まで余裕があったため、動画の制作にもかなり力を入れました。
点と点は線につながる
特に「点と点は線につながる」のくだりの、さまざまな道・ルートを通っていき、最後には街中がトレイルで埋め尽くされる・・・という演出は、自身の体験したことをより視覚的にわかりやすく伝えようと、自身のスキルレベルなりに頑張りました。
英語の字幕 for 海外ニキ
もう1点の工夫として、何かのキッカケで海外ニキにも伝わればいいな、なんてささやかな願いも込めつつ、歌詞に英語の字幕を入れました。日本語圏の方も、日本語の歌詞と併せて読んでみると、より意味を理解できる・・・かもしれません。
最後に
本曲のプロダクションノートは以上になります。
長くなってしまいまいましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
この記事をご覧になって
「へえー、こんな風に曲って出来るんだ」や
「ええ・・・!こんな手間のかかる事していたの??」
など、人によって色々な感想を抱かれるかと思いますが、この記事が曲をより深く楽しむための一助になれば、幸いです。
最後に、本曲の歌詞を、日本語版と英語版の両方を掲載します。
始まりのウィンターランナー 歌詞
日本語歌詞
11月の とある朝 気まぐれで 走りだした 朝の空気が 冷え始めた日のこと 真っ暗で 冷たい空 凍える空気 白い息 すごく寒い やっぱやめよう そう思ってた なのに 今も走る私がいた はじめは ほんのちょっとの距離だった やがて 心は突き動かされて もっと長く そして遠くへ また 走り出す 夜明けの光へ 一歩 踏み出す 始まりのウィンターランナー まだ見ぬ景色 小さな冒険 心のままに 走り出すウィンターランナー 暗闇の 朝6:00 世界はもう 動いてた 部活 仕事 ランナー すれ違いながら ある日 ふと閃いた ルート変えたら どうなるかな 見慣れた道 もしここで曲がったら? -間奏- 点と点は 線につながる 線は面となり 世界は広がる 過去と現在 そして幾多の道 交差して その先へ だから 私は今ここにいる 今は その先があると 知ったから 誰かとの 競争ではなくて 過去の私を 乗り越えるんだ そして 走り出す 夜明けの光へ 一歩 踏み出す 始まりのウィンターランナー まだ見ぬ景色 小さな冒険 心のままに 走り出すウィンターランナー 壁に弾かれても フェードアウトはごめんだ あの時まちがいなく 違う自分になれたから そして 春 明日も 風をきる 何かを 見つけたいから 始まりを告げる空 東の彼方 まぶしい光を見たいから
英語歌詞
One morning in November Somehow I tried to start running it was a day, the morning air begun getting cold Dark and cold sky The air is freezing, the breath gets white Too cold, I cannot carry on I was thinking so But, after all I was still running somehow When I started, the distance was very short One day, something drove me from the inside And then, the distance got longer and longer I’m gonna run again To the light of dawn One step to the light A Winter Runner in the beginning To the view I have never seen To the small adventure Let my spirit fly free Kick the ground, Winter Runner 6:00 in the dark The world was already awake Student, worker, and runner I was crossing them One day, an idea came to my mind What if different way? From the familiar way to the unknown way Dots to the line Lines to the surface, it will be your world Past, present, and so many ways They will be crossed, to the next view That’s why now I'm here Now I can see the road in the distance It’s not a competition with someone Just get over myself in the past And then, I’m gonna run To the light of dawn One step to the light A Winter Runner in the beginning To the view I have never seen To the small adventure Let my spirit fly free Kick the ground, Winter Runner Even though the wall stops me I don’t wanna fade away from the road At that time, undoubtedly I could become another myself And the spring has come I still run through the wind Running to find something The sky tells us the beginning far from the east Shows us the glaring sunlight
(ああああーーー!やっと書き終えることが出来たあああああ!)